質問:何をもって「入国制限」となる犯罪というのでしょうか?
回答:「入国制限」となる犯罪とは、グリーンカードやビザの申請(更新)を行う際にその資格を制限してしまう犯罪を指します。グリーンカード保持者が空港などの入国地点(port of entry)で再入国を拒否される原因にもなり得ます。この犯罪はアメリカ国内・国外を問いません。
質問:どのような犯罪がグリーンカードを制限するのでしょうか?
回答:以下のような犯罪があると、グリーンカードやビザの取得に制限がかかったり、拒否されたりする可能性があります。
- 道徳審査(CIMT: Crimes Involving Moral Turpitude)
詐欺、窃盗など、道徳性を著しく損なう犯罪(moral turpitude)を指します。純粋に政治的理由のみで有罪判決を受けたケースは除外されます。ただし、例外が2つあり、入国が認められる可能性があります。- 犯罪が18歳未満の時に行われ、その後の拘禁から5年以上が経過している場合、グリーンカード申請が可能となる場合があります。
- 最大法定刑が1年を超えず、実際の懲役が6ヶ月以下の場合などの軽微犯罪(1回のみ)であれば、CIMTでも入国制限を受けない場合があります。
- 麻薬関連犯罪
30グラム未満の単純所持でも入国拒否の理由になります。ただし、場合によってはウェイバー(waiver)を申請し免除を得られる可能性があります。 - 複数の犯罪
犯罪が複数あり、宣告刑の合計が5年以上になる場合、入国が拒否される可能性があります。これは同時に裁かれた場合でも、複数回の裁判を受けた場合でも同様です。 - 麻薬取引の「疑い」が認められる場合
麻薬取引で有罪判決を受けていなくても、領事や移民局担当者が麻薬取引を行ったと判断すれば、または教唆や共謀、幇助を行ったと判断されれば該当します。加えて、麻薬取引によって経済的・その他の利益を得た配偶者や子ども(過去5年以内)の場合、その本人がそれを知っていた、あるいは知ることができた状況にあったとみなされれば入国が制限される可能性があります。 - 売春
過去10年以内に売春に従事していた者は、入国が制限されます。直接的に売春を行っていた人に限らず、売春を仲介した人、売春から利益を得た人、米国内で売春や類似の営業を行おうとする人も対象になります。 - 免責特権の主張(Immunity)
米国で重大な犯罪を起こしたにもかかわらず、治外法権などの免責特権を主張して裁判や処罰を受けずに米国を出国し、帰国後も米国の裁判を受けていない場合は入国が拒否されます。外交官などが該当する可能性があります。 - 宗教の自由の侵害
外国政府の役人として在職し、深刻な「宗教の自由」侵害に関与した場合、入国が制限されます。 - 人身売買(Human Trafficking)
不法入国の手助け、違法な目的で人を米国に送り込む行為などを含みます。教唆や共謀、幇助を行った場合も対象です。また、麻薬取引と同様に、過去5年以内に配偶者などが人身売買で利益を得ていた場合、それを知っていた・知り得る状況にあったと判断されれば入国が制限されます。ただし、子どもが未成年だった場合は例外的に認められる可能性があります。 - 資金洗浄(マネーロンダリング)
主犯だけでなく、教唆、共謀、幇助を行った人も含まれます。
質問:入国制限の理由がある場合、ウェイバー(waiver)を受けられますか?
回答:はい。すべての犯罪がウェイバー対象になるわけではありません(殺人や拷問などは除外)が、特定の条件を満たせばウェイバーを申請して承認を得ることができます。以下のような犯罪はウェイバーの申請が可能です。
- 30グラム未満の麻薬の単純所持(1回のみ)
- 道徳審査(CIMT)にあたる犯罪
- 売春
- 複数の犯罪で合計5年以上の懲役刑となる場合
- 米国で重大犯罪を犯し、免責特権を行使して米国の裁判を受けずに出国したケース
質問:ウェイバーはどのように申請すればよいですか?
回答:次のいずれかを立証することでウェイバーの申請が可能になります。
- 犯罪を犯してから15年(売春は除外)が経過しており、たとえ入国を許可しても米国の福祉・安全保障・治安を害さず、申請者が更生し新たに生まれ変わったと証明できる場合。
- 申請者が米国市民または永住権保持者の配偶者、親、子どもであり、もしグリーンカードが不許可になれば彼らに深刻な苦難(extreme hardship)が生じることを証明できる場合。
- 申請者自身がVAWA(Violence Against Women Act)を申請している場合。