犯罪歴
米国市民権を申請する永住権保持者で、過去に犯罪歴がある場合は、すべての犯罪歴を開示しなければなりません。これは、USCIS(米国市民権・移民局)が申請者に市民権を付与する前に、申請者が良好な道徳的品性(good moral character)を備えているかどうかを確認する必要があるためです。
通常、USCISは申請日から5年以内(米国市民との結婚を通じてグリーンカードを取得した場合は3年以内)の犯罪記録を中心に審査しますが、この期間は絶対的なものではありません。USCISは審査にあたり、あらゆる可能性を考慮するため、5年以上前の記録であっても審査に影響を与える場合があります。
最も重要なのは、どれだけ昔のことであっても、犯罪や犯罪の疑いがある行為はすべて開示したほうがよいということです。もし開示が不十分で、USCISが後から事実を発見した場合、虚偽の陳述とみなされて申請が却下される可能性があります。たとえ市民権を取得した後でも、市民権が取り消される恐れもあります。そのため、書類作成には弁護士の支援を受けるなど、慎重に準備するのが安全策です。
市民権申請が禁止される状況
犯罪の種類によっては、市民権申請が永久的に、または一時的に禁止される場合があります。
殺人や加重重罪を犯した場合には、市民権申請が永久的に禁止されます。この基準は法律によって厳格に定められており、USCISでさえも変更する裁量権がありません。したがって、該当する場合は今後市民権を申請できないと考えられます。
加重重罪の厳密な基準は定まっていませんが、さまざまな形で適用される可能性があります。どのような犯罪が該当するのかは、USCISの規定から確認することができます。場合によっては軽微な犯罪であっても加重重罪とみなされることがあります。以下のような犯罪は加重重罪に含まれます。
- 性的暴行
- 未成年者に対する性的虐待
- 麻薬の密売
- 詐欺
- 外国人の不法入国を手助けする行為(配偶者・子・親を除く)
- その他、USCISが加重重罪と認める犯罪
また、別の種類の犯罪では、市民権申請が一時的に禁止される場合もあります。通常、禁止期間は5年ですが、米国市民との結婚を通じてグリーンカードを取得したケースでは3年となる場合もあります。以下のような犯罪は、市民権申請を一時的に禁止することができます。
- 売春
- 麻薬所持
- 違法賭博
- 詐欺
- その他、USCISが認める犯罪
さらに、180日以上の懲役刑を服した場合や、2つ以上の犯罪による刑期を合算して5年以上になる場合にも、市民権申請が一時的に禁止される可能性があります。
その他の内容
申請書には犯罪歴だけでなく、逮捕例や訴訟却下例、逮捕に至らなかった事例など、あらゆる種類の記録を開示しなければなりません。これは申請者の道徳性を判断するために必要であり、不備があると前述のとおり、後に発覚した際に虚偽陳述とみなされ、申請が却下されたり市民権が取り消されたりする恐れがあります。以下のような書類を準備する場合もあります。
- 裁判所または関連機関による公式の陳述書
- 裁判所または関連機関から取得した記録の原本、または公式に認証されたコピー
- 税務当局から受領した納税関連の証明書
- その他、USCISが要求するすべての書類
道徳性の判断
USCISは、申請者の道徳性を判断する際、犯罪歴だけでなく他の行動や要素も検討します。上記の範囲に含まれない行為であっても、道徳性を疑わせるような行為があれば審査に大きな影響を及ぼす可能性があります。たとえば、警察や裁判所への協力態度、 habitual(常習的)飲酒や違法な武器の所持、納税義務や経済的義務を誠実に果たしてきたかどうかなど、さまざまな要素が考慮されます。
弁護士への相談
多くの申請者が弁護士を頼らずに書類を自分で準備した結果、最終的に強制退去となってしまう事例があります。これは、USCISが書類を審査する段階で、申請者の犯罪行為を強制退去の事由と認定する可能性があるからです。したがって、書類作成の際には弁護士の助けを借りるのが望ましいでしょう。