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「政治的な」USCIS手数料の値上げ

10月2日から新たなUSCIS(移民局)の手数料が施行されますが、まず全体的な値上げ自体が反移民政策の一環と見なせるため、これを「政治的」と言わざるを得ません。

今回の手数料値上げで、見た目に最も顕著なのは市民権(ナチュラリゼーション)申請手数料の大幅な引き上げです。725ドルから1,200ドルへ、なんと475ドルも上がりました。これは市民権申請を難しくしようとする意図がそのまま表れており、要するに移民が市民権を得て有権者になることをあまり歓迎していないということです。できるだけ移民(第一世代)の有権者数を減らそうという狙いがあると考えられます。

また、グリーンカード(永住権)申請にかかる費用も見えにくい形で上がりました。これは、I-485申請手数料を1,140ドルから1,130ドルに下げ、一見すると永住権申請費用が安くなったかのように見せているという意味です。

しかし、これは事実とは異なり、USCISは「巧妙」に永住権取得コストを引き上げています。つまり、これまで追加費用を必要としなかった労働許可(Employment Authorization Document)と渡航許可(Advance Parole)の申請手数料を、それぞれ550ドルと590ドルに分割して別途支払わせるようになったのです。グリーンカード申請者の多くは通常、労働許可と渡航許可を同時に申請しますので、結果的に永住権申請の総費用は1,015ドル上がりました(バイオメトリクス手数料が55ドル値引きされているものの)。これは永住権申請手数料を10ドル下げることで錯覚を起こさせる手段とも言えます。就労ビザを経由した永住権申請についても同様です。

さらに、多くの家族が同時に労働許可と渡航許可を申請すると、費用は急激に増加します。加えて、永住権申請が長期間保留される場合、労働許可や渡航許可を更新する際に追加費用が必要になります。そのため、実際のコストは想像以上に膨れ上がることになります。

また、DACA(不法滞在者救済措置)受益者向けの労働許可手数料だけは410ドルのまま据え置かれ、その他の申請者に関しては550ドルに引き上げられました。これは、おそらくDACAの有効期間が2年から1年に短縮されたことへの“補償”的な対応と考えられます。つまり、有効期間を半減したため費用が実質2倍に増えるにもかかわらず、労働許可費用まで引き上げるのはさすがに躊躇したように見えます。

さらに、H-1Bビザ(555ドル)、Lビザ(805ドル)、Oビザ(705ドル)の手数料も引き上げられる予定で、(移民の就労を難しくする狙いがあると解釈できます)変更申請の手数料は370ドルから400ドルに上がる見込みです。

一方で、いくつかの手数料は引き下げられます。グリーンカードの更新費用は540ドルから445ドルへ、バイオメトリクス手数料は85ドルから30ドルに下がります。雇用主請願(I-140)の手数料も700ドルから555ドルに引き下げられます。また、一部のオンライン申請が可能なケースでは、オンラインで申請することで10ドルを節約できるようになります。

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「ギャップビザ(Gap Visa)」

「ギャップビザ」という言葉を聞いたことがない方もいらっしゃると思います。これはステータス変更(Change of Status, COS)の際に生じる問題で、最近USCISがF-1学生ビザへのステータス変更に対して厳しくなったことが原因で生まれた概念です。

以前は、現在のステータスが有効なうちにステータス変更の申請を行えば、処理にどれだけ時間がかかったとしても最終的にステータス変更が承認される限りは問題はありませんでした。しかし最近のUSCISのルール変更により、授業開始日(start date)の少なくとも30日前までは、BビザやHビザなどの有効な非移民ステータス(単なる滞在期限ではない)を保持するよう要求されています。

問題は、ステータス変更の審査が長引く場合に生じます。たとえば、申請から6か月ほど経ってしまうと、現在のステータスはすでに切れてしまい、F-1学生ビザの開始日も過ぎてしまっているという状況になります。そうなると、USCISとしてはステータス変更を認めたいと思っても、新しい規定により承認できなくなってしまうのです。

そこで生まれたのが「ギャップビザ(gap visa)」です。(実際には筆者が作った用語です。)現在の非移民ビザと学生ビザの間の“空白”を埋める必要があるため「ギャップ(gap)」という呼び方をしています。このギャップが1か月以上にならないようにすることがギャップビザの目的です。

したがって、もし現在のビザの有効期限が近づいている状態でステータス変更を申請する場合は、同時にギャップビザの申請をしておくことが賢明です。後になって急にビザを申請しようとすると、それ自体が難しくなる場合がありますし、すでに有効な滞在ビザがない場合、多くの非移民ビザステータスへの変更が不可能になります。(F-1学生ビザと同様の規定を適用するビザは今後さらに増加する見込みです。)

また、後から急にギャップビザを申請した場合、それが承認されないと学生ビザを取得できず、さらにギャップビザ承認を待っている間に学生ビザ用のI-20の有効期限が切れてしまうなど、悪循環が生じる可能性があります。したがって、ステータス変更を行う際には、この概念をしっかりと理解しておく必要があります。